三野新 外が静かになるまで

写真:三野新 デザイン:石塚俊

(※本展示は、十和田市現代美術館のサテライト会場spaceで2023年9月16日(土)– 12月17日(日)まで開催している三野新の個展の一部です。)
 演劇と写真という異なる分野を学び、舞台作家/写真家として活動してきた三野新は、これまで土地や風景に眠る歴史・記憶をもとに戯曲を書き、さらにそれをパフォーマンスやインスタレーションという形で「上演」するという領域横断的な表現を行なってきました。
三野は以前から日本に駐留する米軍の存在へと関心を寄せ、「沖縄」を題材とした作品も発表してきました。本展では、同じく米軍基地を擁する青森県三沢市でのリサーチから書き下ろした新作の戯曲「外が静かになるまで」を発表します。前作「クバへ/クバから」は、東京に住むアーティストがいかに「沖縄」に向き合うことができるのかという「当事者/非当事者性」という問題系を探るものでしたが、昨年度ニューヨークでの半年間の滞在を経た三野が今回取り組むのは、よりマクロな視点から「戦争の気配を感じながら生きる私たち」へと向けた作品です。ますます不安定さを増していく世界に生きる私たちにとって、三野の新作は私たちのうちに「眠る」意識へと呼びかけるものとなるでしょう。 
 本展は、十和田市現代美術館サテライト会場spaceでのインスタレーションと、十和田のまちなかを会場にした複数のインタレーションで構成されます。一本の戯曲が複数のインスタレーションとしてまちに配され、それらを読み集めていくことで一つの作品として体験することができる実験的な展覧会となります。

アーティストについて

三野 新(みの・あらた)

写真家、舞台作家。1987年福岡県生まれ。周縁化された場所やものに残る記憶や風景を繋ぎ、「ここ」と「あそこ」の中間項を見つけ前景化させることをテーマに研究と実践を行う。主に自身で撮影した写真・映像をもとにフィクションを作り、それを自己と他者の身体、様々なメディアを通して発表するなど、領域横断的に活動している。2011年早稲田大学文学部演劇映像コース卒業、2017年東京藝術大学美術研究科先端芸術表現専攻博士後期課程修了。博士(芸術)。2022年から2023年までAsian Cultural Councilの助成を受け、ニューヨークに滞在。現在は東京と神奈川を拠点に活動。近年の主な展覧会・公演に「SEAsaw: 木曽川、宇宙を航海する」(mh PROJECT ノコギリニ、愛知、2023)、「YAU TEN」 (YAU STUDIO、東京、2022)、「クバへ/クバから」(ANB Tokyo、2021)、『うまく落ちる練習』(京都芸術センター、2019)など。www.aratamino.com

撮影:細倉真弓

作家メッセージ

ホノルルにあるハワイ日本文化センターには、かつて日系移民コミュニティが建てた石柱碑がいくつか展示されている。それらには、「忠義」「我慢」「頑張り」などのいかにも日本らしい単語と共に、「仕方がない」というセリフが刻み付けられていた。その場に留まり続けねばならなかった当時の日系移民の過酷さを鮮烈に物語る言葉である。しかし、これは、同時に日本に住むわたしたちの現実を表す言葉でもあるはずだ。仕方がなさ、によって、様々なレベルで規定されている、わたしたちの生活。
本作は、そのような生活の状況を背景に制作された。ホテルの一室の中で何度も再演され続ける「仕方がなく」ここにいる家具たちと飛行機の物語。かれらが語る物語を、あなたの手によって現実の世界に差し戻すことをわたしは願う。ホテルのチェックアウトの時間は、もうとうに過ぎてしまっている現実の中で。


web: https://towadaartcenter.com/exhibitions/mino-arata/
主催: 十和田市現代美術館
助成: 令和5年度 文化庁 文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光推進事業
協力: 14-54、スーパーホテル十和田天然温泉
後援: 青森朝日放送、青森テレビ、青森放送、エフエム青森、デーリー東北新聞社、東奥日報社、十和田市教育委員会
企画: 外山有茉



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入場無料